ドラゴンクエスト（Dragon Quest、通称：ドラクエ）は、日本のゲームメーカーであるエニックス（現：スクウェア・エニックス）から発売されたロールプレイングゲーム（RPG）シリーズです。1986年の第1作発売以来、日本におけるRPGブームの火付け役となり、「国民的RPG」として幅広い世代に愛され続けています。
1. 創成期：RPGの誕生と確立（1986年〜1990年）
ドラゴンクエストは、家庭用ゲーム機（ファミリーコンピュータ）で本格的なRPGを遊べるようにした、画期的な作品でした。
『ドラゴンクエスト』（1986年）：
発売: ファミリーコンピュータ（FC）
特徴: 堀井雄二（シナリオ・ゲームデザイン）、鳥山明（キャラクターデザイン）、すぎやまこういち（音楽）という、後のシリーズの「トライアングル」を形成する布陣で制作されました。
革新性: それまで複雑だったPC-RPGのシステムを整理し、「コマンド選択式戦闘」や「レベルアップによる成長」といった要素を、家庭用ゲーム機で誰もが楽しめるように単純化・洗練させました。この成功が、日本のRPGの基礎を築きました。
『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』（1987年）：
特徴: 複数のキャラクターによるパーティ制や、広大なフィールドマップ、船での移動、そして復活の呪文の文字数が大幅に増加（裏技も人気に）するなど、システムが大幅に進化しました。
『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』（1988年）：
特徴: 「転職システム」の導入、そして壮大な世界観と時間軸の逆転という衝撃的なストーリー展開で、社会現象を巻き起こしました。発売日には店頭に長蛇の列ができ、**「ドラクエ現象」**として社会ニュースにもなりました。
2. 成長期：スーパーファミコンへの移行と伝統の継承（1990年〜1995年）
プラットフォームをスーパーファミコン（SFC）に移し、表現力が大幅に向上しました。
『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』（1990年）：
発売: SFC
特徴: **「章立てシステム」**を導入し、主人公（勇者）とその仲間たちの物語を個別に描いた後、最終章で合流するという群像劇的な構成を取りました。
『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』（1992年）：
特徴: **「親子三代にわたる壮大な物語」と、「モンスターを仲間にするシステム」が特徴的です。特に、人生の選択をプレイヤーに委ねる「結婚相手の選択」**が大きな話題となりました。
『ドラゴンクエストVI 幻の大地』（1995年）：
特徴: 上下二つの世界を行き来する複雑な世界観と、『III』の転職システムをベースにした**「ダーマの神殿」**システムが進化しました。SFC最後のドラクエ本編となりました。
3. 転換期：新プラットフォームへの挑戦と多角化（1997年〜2004年）
次世代ゲーム機や携帯ゲーム機へとプラットフォームを移し、グラフィック表現が大きく進化しました。
『ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち』（2000年）：
発売: PlayStation（PS）
特徴: 発売が大きく遅れたものの、PlayStationで初めて発売された本編作品です。過去の「小さな世界」を旅して石版を集めるという、探索要素の強い構成が特徴です。
『ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君』（2004年）：
発売: PlayStation 2（PS2）
特徴: シリーズで初めて3Dポリゴンを採用し、フィールドやバトルシーンが臨場感のあるフル3Dで描かれました。また、**「スキルポイント」による育成システムや、「テンション」**システムを導入しました。
4. 現代：オンライン化と多様な展開（2009年〜現在）
『ドラゴンクエストIX 星空の守り人』（2009年）：
発売: ニンテンドーDS（DS）
特徴: 携帯機初のナンバリングタイトルとして、**「すれちがい通信」を最大限に活用しました。マルチプレイ要素が強く、「まさゆきの地図」**などのアイテム交換が社会現象となりました。
『ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン』（2012年）：
特徴: シリーズ初の**オンラインRPG（MMORPG）**として登場しました。現在も継続してサービスされており、シリーズの新たな柱となっています。
『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』（2017年）：
発売: PS4、ニンテンドー3DS、Nintendo Switch
特徴: シリーズ30周年記念作品。原点回帰を目指したストーリーと、美しいグラフィック（PS4版）、そして3Dと2Dを切り替えられる（3DS版）など、最新技術とレトロな魅力を両立させました。
スピンオフ作品：
『ドラゴンクエストモンスターズ』や『ドラゴンクエストVジャンク』（アクションRPG）、『ドラゴンクエストビルダーズ』（サンドボックス型RPG）など、本編とは異なるジャンルやシステムを持つスピンオフ作品も数多く展開し、シリーズの世界観を広げています。
ドラゴンクエストは、そのシンプルなシステムと**「勇者と魔王」**という王道的な物語で、日本のゲーム文化に決定的な影響を与え続けています。